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報告書

水銀ターゲット容器内壁のキャビテーション損傷観察に関する技術資料,2; キャビテーション損傷深さの測定

直江 崇; 涌井 隆; 木下 秀孝; 粉川 広行; 勅使河原 誠; 羽賀 勝洋

JAEA-Technology 2023-022, 81 Pages, 2024/01

JAEA-Technology-2023-022.pdf:9.87MB

大強度陽子加速器研究施設(Japan Proton Accelerator Research Complex, J-PARC)の物質・生命科学実験施設に設置されている核破砕パルス中性子源水銀ターゲットでは、高エネルギーのパルス陽子ビーム入射時に、核破砕反応による中性子の発生と同時に水銀の急激な熱膨張によって、圧力波が発生する。この圧力波は、水銀中を伝ぱする過程で負圧によるキャビテーションを誘発する。水銀を充填するステンレス鋼製の水銀ターゲット容器の内壁近傍でキャビテーションが崩壊することによって、内壁表面には激しい壊食損傷が形成される。水銀ターゲット容器は、陽子ビームが入射することによって先端部分の内部発熱に起因する熱応力を低減するために、先端部を厚さ3mmの薄肉構造としている。陽子ビーム強度の増加に伴って、キャビテーションによる攻撃性は増加するため、壊食損傷がターゲット容器の疲労破壊や水銀の漏洩につながる。したがって、設計出力である1MWでの長期的な安定運転を実現するために損傷の低減化が求められている。キャビテーションによる容器壁面の壊食損傷を低減することを目的として、圧力波を低減するための水銀中への微小気泡注入や、ターゲット容器先端部の2重壁構造化などの対策を施している。損傷低減化策の効果の確認や、ビーム出力と壊食痕による損傷深さの相関を評価し、今後の運転条件を検討するために、使用済みのターゲット容器の先端部から試験片を切出し、損傷の観察を実施している。これまでに、内壁に形成されたキャビテーションによる損傷形態の観察と壊食痕による損傷の深さを測定することで、運転条件との相関について検討を実施し、気泡注入によって著しい損傷低減効果が発現されること、2重壁構造によって、先端部分の損傷形成がビーム出力に依存せず抑制できることを確認した。これらの成果によって、施設の設計目標である1MWの安定運転を実施可能な見通しを得た。本報では、これまでに開発、適用した実機水銀ターゲット容器内壁の損傷観察の手法、測定結果及び運転条件との相関についてこれまでに得られた成果をまとめる。

論文

Neutron-production double-differential cross sections of $$^{rm nat}$$Pb and $$^{209}$$Bi in proton-induced reactions near 100 MeV

岩元 大樹; 明午 伸一郎; 佐藤 大樹; 岩元 洋介; 石 禎浩*; 上杉 智教*; 八島 浩*; 西尾 勝久; 杉原 健太*; $c{C}$elik, Y.*; et al.

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 544, p.165107_1 - 165107_15, 2023/11

 被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Instruments & Instrumentation)

入射陽子エネルギー200MeV以下の中性子生成に関する二重微分断面積(DDX)データの不足は、加速器駆動核破砕システム(ADS)の研究開発などの技術応用における核破砕モデルの検証を妨げている。本研究では、このエネルギー領域におけるADS核破砕ターゲット材料のDDX実験データを取得し、解析予測との比較を通じて核破砕モデルに関する課題を明らかにすることを目的とした。実験は、京都大学のFFAG加速器を用いて行った。100MeV領域の$$^{rm nat}$$Pbと$$^{209}$$Biの陽子入射核反応に対するDDXを飛行時間法を用いて30$$^{circ}$$から150$$^{circ}$$の角度範囲で測定した。得られたDDXをモンテカルロ法に基づく種々の核破砕モデル及び評価済み核データライブラリによる計算結果と比較した。DDXの測定値と核破砕モデル及び評価済み核データライブラリに基づく解析値を比較した結果、CEM03.03モデルが実験値に最も近い一致を示した。さらに、100MeV領域における陽子入射中性子生成DDXの再現性向上のために対処すべき複数の課題を明らかにした。

論文

Measurement of 107-MeV proton-induced double-differential thick target neutron yields for Fe, Pb, and Bi using a fixed-field alternating gradient accelerator at Kyoto University

岩元 大樹; 中野 敬太; 明午 伸一郎; 佐藤 大樹; 岩元 洋介; 杉原 健太; 西尾 勝久; 石 禎浩*; 上杉 智教*; 栗山 靖敏*; et al.

Journal of Nuclear Science and Technology, 60(4), p.435 - 449, 2023/04

 被引用回数:3 パーセンタイル:66.21(Nuclear Science & Technology)

加速器駆動核変換システム(ADS)の研究開発及び京都大学臨界実験装置(KUCA)におけるADS未臨界炉物理の基礎研究を目的として、固定磁場強収束(FFAG)加速器を用いて107MeV陽子による鉄、鉛及びビスマス標的に対する二重微分中性子収量(TTNY)を測定した。TTNYは8個の中性子検出器(各検出器は小型のNE213液体有機シンチレータと光電子増倍管より構成される)からなる中性子検出器システムを用いて飛行時間法により得られたものである。測定で得られたTTNYを、粒子・重イオン輸送コードシステム(PHITS)に組み込まれたモンテカルロ法に基づく核破砕反応モデル(INCL4.6/GEM, Bertini/GEM, JQMD/GEM, JQMD/SMM/GEM)及び評価済み高エネルギー核データライブラリ(JENDL-4.0/HE)による計算結果と比較した。JENDL-4.0/HEを含む比較対象のモデルは、検出器角度5度における高エネルギーピークを再現しないなどの特徴的な不一致が見られた。測定で得られたTTNYとPHITSによって評価した20MeV以下のエネルギー及び角度積分中性子収率を比較した結果、INCL4.6/GEMがKUCAにおけるADS炉物理実験のモンテカルロ輸送シミュレーションに適していることが示された。

論文

Mechanical properties of pure tungsten and tantalum irradiated by protons and neutrons at the Swiss spallation-neutron source

斎藤 滋; 鈴木 和博; 小畑 裕希; Dai, Y.*

Nuclear Materials and Energy (Internet), 34, p.101338_1 - 101338_9, 2023/03

 被引用回数:2 パーセンタイル:50.96(Nuclear Science & Technology)

固体ターゲットを用いる核破砕中性子源のターゲット材料及び被覆材料は、高エネルギー陽子及び核破砕中性子の照射により損傷を受ける。核破砕条件における材料の照射損傷特性を明らかにするために、スイスのPSIを中心として核破砕ターゲット材料照射プログラム(STIP: SINQ Target Irradiation Program)が進行中である。本プログラムでは、PSIの加速器で各種材料を580MeVの陽子で照射し、参加国がPIEを分担して行っている。原子力機構も照射試料の一部を輸送し、照射後試験を行った。本発表ではSTIP-II試料の中からWとTaの引張り試験の結果を報告する。これらの試料の照射条件は照射温度が130-380$$^{circ}$$C、はじき出し損傷量が10.2-35.0dpaであった。引張り試験の結果、WのうちW-Polyは照射によって脆化し、伸びがほぼ0で、弾性域で破断した。W-Sinは10.2dpa照射後も全伸び約6%を示し、延性を保っていた。Taは、10.3dpa照射試料が0.7-2.6%の全伸びを示したほかは伸びがほぼ0で、弾性域で破断した。

論文

Unified description of the fission probability for highly excited nuclei

岩元 大樹

JAEA-Conf 2021-001, p.24 - 29, 2022/03

放射線挙動解析コードPHITSは、加速器駆動核変換システムや核破砕中性子源施設等における放射能・被曝線量評価及び施設の遮蔽設計に重要な役割を演じるが、PHITSの核破砕反応を記述するモデルINCL4.6/GEMは核分裂生成物の収量を大幅に過小評価することが知られており、モデルの高度化が求められている。本研究では、核分裂生成物の収量予測に重要なパラメータとなる「核分裂確率」を現象論的に記述するモデルを提案し、このモデルを粒子輸送計算コードPHITSに組み込まれている脱励起過程計算コードGEMの高エネルギー核分裂モデルに適用した。実験値との比較の結果、広範囲のサブアクチノイド核種に対する陽子入射、中性子入射及び重陽子入射反応に対して、核分裂断面積を統一的に予測でき、その予測精度は従来モデルよりも大幅に改善することを示した。さらに、本モデルを用いた解析により、核分裂生成物の同位体分布を精度よく求めるためには、核内カスケード過程計算コードINCL4.6における高励起残留核の記述の修正が必要であることを明らかにした[1]。これらの研究成果により、日本原子力学会核データ部会賞学術賞を受賞した。本研究会では提案したモデルおよび研究成果内容について報告する。[1] H. Iwamoto and S. Meigo, "Unified description of the fission probability for highly excited nuclei", Journal of Nuclear Science and Technology, 56:2, 160-171 (2019).

論文

Flow measurement in high temperature liquid metal by using electro-magnet probe

有吉 玄; 大林 寛生; 斎藤 滋; 佐々 敏信

Proceedings of 19th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-19) (Internet), 10 Pages, 2022/03

液体重金属を核破砕ターゲットおよび冷却材として利用する核変換施設の建設には、液体重金属の流動特性を事前に明らかにしておくことが重要となる。鉛ビスマス共晶合金(LBE)は、加速器駆動システムや高速炉等の革新的原子力システムにおける核破砕ターゲットや冷却材の候補材料とされており、J-PARCではLBEを利用した核破砕ターゲットシステムの構築に向けた技術開発を推進している。通常、LBEの流動特性は汎用数値流体力学(CFD)コードを用いて予測・把握されるが、このようにCFDコードが多用される一つの要因は、高温液体重金属流れに対する計測手法の確立が不十分なことである。そこで原子力機構では、小型電磁石を使用した局所流速計を開発した。開発した流速計は480$$^{circ}$$CのLBEへ適用され、誘導起電力と流速の良好な相関が得られることが実証された。

報告書

加速器駆動システム上部構造の放射線遮蔽解析

岩元 大樹; 明午 伸一郎; 中野 敬太; Yee-Rendon, B.; 方野 量太; 菅原 隆徳; 西原 健司; 佐々 敏信; 前川 藤夫

JAEA-Research 2021-012, 58 Pages, 2022/01

JAEA-Research-2021-012.pdf:7.23MB

加速器駆動システム(ADS)の核破砕標的より上部に位置する構造物の放射線遮蔽解析を実施した。解析では、モンテカルロ粒子輸送計算コードPHITS及び誘導放射能解析コードDCHAINPHITSを用い、1サイクルを300日として、熱出力800MW及びビーム出力30MWの1サイクルフル出力運転を仮定した。解析対象の構造物は、標的の真上に設置されたビームダクト、原子炉容器上部に位置するビーム輸送室及びその室内に設置するビーム輸送機器及び遮蔽体並びに天井遮蔽体とした。それぞれの構造物に対する運転中及び運転後の放射線量及び放射能量を評価し、天井遮蔽体の遮蔽構造を求めた。その結果、本検討で求めた遮蔽構造を用いることで、法令で定められる敷地境界における線量限度を十分に下回る等の知見が得られた。さらに本検討の条件では、運転後における標的真上に位置するビーム輸送室内機器付近の実効線量率は10mSv/hを超え、室内機器の保守及び交換では遠隔での作業が必須となることを示した。

論文

加速器駆動核変換システム(ADS)の鉛ビスマス標的

佐々 敏信

加速器, 18(4), p.233 - 240, 2022/01

鉛ビスマス共晶合金(LBE)は、長寿命放射性廃棄物の放射性毒性を低減する加速器駆動核変換システム(ADS)の核破砕ターゲットとして有望な選択肢である。LBEは重金属であり、核変換システムの核破砕ターゲットや冷却材として良好な性質を持つ。しかしながら、LBEは構造材の腐食性が高いことでも知られている。この論文では、腐食を抑制するための酸素濃度制御技術や高温での運転などのLBE利用における課題解決のための最新の技術開発をADSターゲットの概要とともに解説する。

論文

J-PARCにおける核破砕中性子標的

羽賀 勝洋

加速器, 18(4), p.210 - 216, 2022/01

高出力加速器を用いたパルス核破砕中性子源は、物質科学や生命科学の分野において最先端の研究を行うために適した高強度で幅の狭い良質な中性子を供給できる有用な装置である。このシステムでは、高出力加速器で作り出すkWからMWオーダーの陽子ビームを重金属の標的に入射し、標的原子核との核破砕反応により大量の中性子を生成し、この中性子を減速材や反射体で熱・冷中性子に減速し、先端的な中性子実験装置群に供給する。本稿では主にJ-PARCのパルス核破砕中性子源について、中性子ビームを生成するしくみと中性子源の構造の概要、水銀標的等の標的の工学的設計手法、パルス陽子ビームの入射により水銀中で発生する最大40MPaにも達する圧力波による標的容器の損傷を低減する方法などの技術課題とその対策について解説する。

論文

Measurement of nuclide production cross sections for proton-induced reactions on Mn and Co at 1.3, 2.2, and 3.0 GeV

竹下 隼人*; 明午 伸一郎; 松田 洋樹*; 岩元 大樹; 中野 敬太; 渡辺 幸信*; 前川 藤夫

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 511, p.30 - 41, 2022/01

 被引用回数:6 パーセンタイル:64.12(Instruments & Instrumentation)

1.3, 2.2および3.0GeVの陽子入射によるMnおよびCoの核種生成断面積を放射化法によりJ-PARCで測定した。$$^{55}$$Mn(p,X)$$^{38}$$S, $$^{55}$$Mn(p,X)$$^{41}$$Ar、および$$^{59}$$Co(p,X)$$^{38}$$Sの生成断面積を世界で初めて取得した。安定した陽子ビームと確立されたビームモニタにより、系統的不確かさを典型的に5%以下に低減することができ、過去のデータよりも優れたものとなった。核破砕反応モデルと評価済み核データライブラリの予測精度の検証のため、測定データをPHITSの核破砕反応モデル(INCL4.6/GEM, Bertini/GEM, JAM/GEM)、INCL++/ABLA07、およびJENDL/HE-2007ライブラリの断面積と比較した。平均二乗偏差係数の比較により、INCL4.6/GEMとJENDL/HE-2007は他のモデルよりも実測データとのよい一致を示すことがわかった。

論文

SiCワイヤにおける二次電子放出の大強度ビームに対する耐久性

明午 伸一郎; 中野 敬太; 大久保 成彰; 湯山 貴裕*; 石井 保行*

Proceedings of 18th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.296 - 301, 2021/10

原子炉の廃棄物の有害度低減に用いる加速器駆動システム(ADS)や大強度核破砕中性子源の安定した運転のためには、ビームプロファイルモニタが重要となる。J-PARCの核破砕中性子源では、炭化珪素(SiC)の二次電子弾き出しによるマルチワイヤ-プロファイルモニタ(MWPM)用い測定を行っている。ADSのターゲット等の材料試験のためにJ-PARCで建設を計画している陽子照射施設でも、SiC製のMWPMを用いる予定としている。SiCのビーム耐久性が重要となるため、HeおよびArイオンビームを用いてSiCワイヤの劣化を測定した。本研究ではまた、2次元のビームプロファイル取得のため、蛍光型プロファイルモニタの開発を行った。アルミナを用いた蛍光体に対し、ArおよびXeイオンビームを入射し、蛍光スペクトルの測定を行った。

論文

Estimation of uncertainty in proton-induced spallation neutron multiplicity for Pb, W, Fe, and C targets

岩元 大樹; 明午 伸一郎

JPS Conference Proceedings (Internet), 33, p.011046_1 - 011046_6, 2021/03

核反応で発生する核破砕中性子の収量(核破砕中性子多重度)は、加速器駆動核変換システム(ADS)やJ-PARC等の核破砕中性子源施設の核的性能および遮蔽設計値を決定するうえで極めて重要なパラメータであり、これらの施設設計の信頼性評価では、核破砕中性子多重度の不確かさに関する情報が必要となる。本研究では、ADSおよび核破砕中性子源施設で使用される代表的な4つの標的物質(鉛,タングステン,鉄および炭素)に対して、100MeVから3GeVまでの陽子入射による核破砕中性子多重度の不確かさを評価した。本評価では、過去に世界の加速器施設で測定された陽子入射中性子生成二重微分断面積の実験データをもとに、モンテカルロ粒子輸送計算コードPHITSの核反応モデル計算コードINCL4.6/GEMを用いて統計学的手法により不確かさを求めた。解析の結果、核反応モデルは4標的物質に対して実験値を比較的よく再現するものの、その再現性は標的によって異なり、実験値の不確かさおよび実験値間のばらつきにより、標準偏差に換算して28%から45%程度の相対的不確かさを持つことがわかった。今後は、本研究で得られた不確かさ評価結果をもとに、ADSや核破砕中性子源施設の核設計および遮蔽設計の信頼性評価を実施する。

論文

250 kW LBE spallation target for ADS development in J-PARC

佐々 敏信; 斎藤 滋; 大林 寛生; 有吉 玄

JPS Conference Proceedings (Internet), 33, p.011051_1 - 011051_6, 2021/03

マイナーアクチノイド核変換のための加速器駆動システム(ADS)実現のため、JAEAはJ-PARCに陽子ビーム照射施設の建設を提案している。施設は鉛ビスマス液体合金(LBE)を安全に利用するための技術課題の解決のために計画されている。LBE冷却ADSの運転温度域を包含する陽子・中性子ビーム照射が可能な施設として250kWのLBE核破砕ターゲットを設置する。施設建設に不可欠な酸素濃度制御技術や遠隔操作によるターゲット保守技術、核破砕ターゲット設計などの研究開発が行われており、ターゲットモックアップや材料腐食試験のための大型LBE試験ループが整備されている。最新の250kW鉛ビスマス核破砕ターゲットの開発状況を報告する。

論文

2020年度核データ部会賞,学術賞; 高励起原子核の核分裂確率の統一的な記述

岩元 大樹

核データニュース(インターネット), (128), p.13 - 25, 2021/02

近年、核破砕反応で発生する中性子を利用した物質科学研究や産業応用が世界規模で展開されている。そこでは、施設の利用や放射線安全の観点から、核破砕反応で生み出される二次粒子や核破砕生成物に起因する放射線量や放射能量に対する予測精度の向上が求められている。本稿では、核破砕反応の基礎およびこれを記述するための核反応モデルが直面している課題について説明するとともに、この課題を解決すべく取り組んだ研究および研究成果(2020年度核データ部会賞学術賞受賞)について紹介する。

論文

A Comprehensive study of spallation models for proton-induced spallation product yields utilized in transport calculation

岩元 大樹; 明午 伸一郎; 松田 洋樹

EPJ Web of Conferences, 239, p.06001_1 - 06001_6, 2020/09

 被引用回数:1 パーセンタイル:72.11(Nuclear Science & Technology)

モンテカルロ粒子輸送計算コードは、加速器駆動核変換システム(ADS)及びJ-PARC等の高エネルギー陽子加速器・大強度中性子源施設の遮蔽設計で重要な役割を演じるが、モンテカルロ粒子輸送計算コードに組み込まれている核反応モデルは高度化の余地が残されている。本研究では、被ばく線量評価・放射能量評価で重要な核破砕生成物の核種生成断面積に関する実験データ及びモンテカルロ粒子輸送計算コード(PHITS, MCNP6及びGEANT4)で使用される最新の核反応モデル(INCL4.6/GEM, Bertini/GEM, JQMD2/GEM, JQMD2/SMM/GEM, CEM03.03, INCL++/GEMINI++, INCL++/ABLA07等)による解析結果と比較することで、現状のPHITS核反応モデルの予測精度を把握し、高度化に向けた課題を摘出した。実験値との比較では、ADS及び核破砕中性子源施設で重要な400MeVから1GeVの陽子入射エネルギー領域及び重標的核種に対する実験値を対象とし、ドイツGSIで測定された逆運動学による実験データ及びJ-PARCで測定された最新の結果を含む放射化法による実験データを使用した。比較の結果、PHITS推奨の核反応モデルINCL4.6/GEMは、核分裂生成物を過小評価し、蒸発残留核について同一元素に対して中性子過剰に評価する傾向を示すことが分かった。さらに、実験データが少ない中重核領域及び核分裂生成核種と蒸発残留核種の間の領域で、モデル間の差異が顕著であることを明らかにした。

論文

Two-parameter model for optimizing target beam distribution with an octupole magnet

明午 伸一郎; 大井 元貴; 藤森 寛*

Physical Review Accelerators and Beams (Internet), 23(6), p.062802_1 - 062802_24, 2020/06

 被引用回数:3 パーセンタイル:35.72(Physics, Nuclear)

加速器駆動の核変換システム(ADS)や核破砕中性子源に用いられる陽子加速器のビーム出力増強につれ、ビーム窓や標的の損傷は深刻な問題となり、損傷緩和のためにビーム電流密度の均一化が重要となる。密度均一化のため比較的よく用いられるラスター磁石には、故障時のビーム集束の重大な問題がある。一方、非線形光学を用いたビーム平坦化にはビーム拡大の問題があることが指摘され、これまで非線形効果導入の八極磁石におけるビームの角度の広がりを無視したフィラメント近似模型による検討が行われた。フィラメント近似模型では、非線形収斂作用を適切に評価できないため、本研究では一般化した非線形モデルの適用により非線形ビーム光学における収斂および発散作用を詳細に検討した。正規化した八極強度$$ K^{*}_8 $$と位相進行$$phi$$における$$cotphi$$の2つのパラメータ導入により、非線形効果を特定な条件によらず一般化できることを明確にした。ビームのピーク密度低減と損失最小化という拮抗する問題の解決には、$$K^{*}_8 sim $$ 1および$$ cotphisim$$ 3とすることにより解決できることが判明した。J-PARCの陽子ビーム輸送系(3NBT)に本検討結果を適用し、核破砕中性子源の水銀標的入口のビーム形状の比較検討した結果、モデル計算によるビーム分布は実験データとよい一致を示し、線形光学においてピーク電流密度を約50%にできることを示した。

論文

Current Status of R&D and PIE Program for ADS Material Development in JAEA

斎藤 滋; 大久保 成彰; 大林 寛生; Wan, T.; 菅原 隆徳; 佐々 敏信; 前川 藤夫

JPS Conference Proceedings (Internet), 28, p.071003_1 - 071003_6, 2020/02

原子力機構は、加速器駆動システム(ADS: Accelerator-Driven Systems)の設計に必要な材料照射データベースを作成し、流動LBE中での照射効果について研究するため、J-PARCに陽子照射施設の建設を計画している。この照射施設では、鉛ビスマス共晶合金(LBE: Lead-Bismuth Eutectic)の核破砕ターゲットに250kWの陽子ビームを入射し、ADSの構造材候補材についてLBE流動下での照射試験を実施する。この照射施設を実現するために、様々な研究開発が行われている。LBEターゲットとターゲット台車の設計検討ついては概念設計を終えた。要素技術開発として大型のLBEループが製作され、本格運転へ向け準備中である。LBEループのための酸素濃度制御システムも開発された。遠隔操作によるターゲット交換試験も進捗している。照射試料の照射後試験フローは完成し、照射後試験技術について検討を進めている。その他、TEF-Tの実現に向けた現在の研究開発状況についても報告する。

論文

New design and fabrication technology applied in mercury target vessel #8 of J-PARC

涌井 隆; 若井 栄一; 粉川 広行; 直江 崇; 花野 耕平; 羽賀 勝洋; 高田 弘; 島田 翼*; 鹿又 研一*

JPS Conference Proceedings (Internet), 28, p.081002_1 - 081002_6, 2020/02

J-PARCの水銀ターゲット容器は、水銀容器と二重容器構造の保護容器(内側及び外側容器)からなる三重容器構造である。2015年の500kWビーム運転時、水銀ターゲット容器の保護容器からの微小な水漏れが2回発生した。この容器破損から得られた知見を基に、設計, 製作及び試験検査過程の改善を行った。ワイヤ放電加工を用いて、1つのステンレスブロックから切り出した一体化構造を採用することにより、水銀ターゲット容器前方の溶接線の長さは約55%まで大幅に減らすことができた。放射線透過試験や超音波探傷試験による徹底的な溶接検査を実施した。2017年の9月に水銀ターゲット容器8号機が完成し、8号機を使用したビーム運転が開始された。500kWの安定的なビーム運転が実現でき、ビーム試験時には、1MWの最大ビーム強度を経験することができた。

論文

大強度陽子加速器のための標的上のプロファイルモニタの開発

明午 伸一郎; 武井 早憲; 松田 洋樹; 百合 庸介*; 湯山 貴裕*

Proceedings of 16th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.515 - 519, 2019/07

J-PARCセンターで進めている核変換実験施設では、標的に入射する大強度陽子ビームの形状を測定するために、発光型のプロファイルモニタの開発を行っている。このため、量子科学技術研究開発機構の高崎量子応用研究所のTIARA施設において、アルミナ発光型のプロファイルモニタの試験をArビーム(エネルギ150MeV)を用いて行った。アルミナ発光体は、加速器施設における実際の使用状況を考慮し、溶射によりアルミからなる母材に塗布し、密着性を有していることを試験により確認した。耐放射線性型のファイバイメージスコープを用いてビーム形状を測定したところ、明瞭な形状が得られることが確認された。さらに、発光体のビームに起因する発光強度の劣化をスペクトロメータを用いて測定した。その結果、700nmより長波長領域では2.5時間程度の照射時間で20%程度の発光強度の劣化が観測された。一方、700nmより短波長領域では著しい劣化が無いことが確認されたため、測定に用いる波長領域の選択により劣化の影響を緩和できることがわかった。

論文

長寿命核分裂生成核種$$^{93}$$Zrの陽子・重陽子入射核破砕同位体生成に関する研究

川瀬 頌一郎

核データニュース(インターネット), (122), p.75 - 80, 2019/02

ジルコニウム-93は使用済核燃料に含まれる主要な長寿命核分裂生成物の一つである。本資料では、理化学研究所RIビームファクトリーにおいて行った、$$^{93}$$Zrに対する核子あたり105MeVの陽子・重陽子入射核破砕反応による同位体生成断面積の測定研究について紹介する。測定は測定対象の核種を標的としてではなく高速ビームとして利用する逆運動学法を用いて行い、安定核種も含む広範な同位体について生成断面積を得た。実験結果は核内カスケードモデルと一般化蒸発モデルを取り入れたPHITSによるモンテカルロ計算と比較した。

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